「セカイがカフェになっちゃった!」の魅力:楽曲分析から分かるごちうさ楽曲のエッセンス メロディ編

こんにちは、北近畿5号です。

前回は「セカイがカフェになっちゃった!」の構成について考察し、楽曲を感傷的に盛り上げる複数のトリックが用いられていること、そしてこれまでのごちうさ楽曲のDNAが受け継がれていることを分析しました。

今回は、楽曲の中でも重要な要素であるメロディについて分析してみたいと思います。

メロディ ~まるでキャラクターたちが語り合うかのようなフレーズと所々のアクセント~

全体を通して、メインのフレーズの間にサブのフレーズが挟まるメロディのかけ合いが見られます。A・A’メロの終わりや、Bメロ全体、サビ途中にこの合いの手のサブフレーズが多用され、メインフレーズの流れを絶やさない効果を生み出しています。この手法はDaydream cafeやノーポイッ!でも見られた手法で、歌詞が付くとキャラクターたちが代わる代わる歌っているように聞こえて、とても楽しい曲調になります。

メインキーはE(ホ長調)と、温もりや懐かしさを感じさせる働きのある調性が選ばれており、ココアたちの夏の思い出を描いたOVAの内容に非常にマッチしています。曲中の所々にナチュラルが付いて部分的にG(ト長調)へ短三度転調しており、4分の楽曲の中でも聴いている人の心を揺さぶるアクセントになっています。短三度転調は同主調の平行調への転調、すなわち近親調への転調であるため、あまりにも自然すぎて聴いている人に気づかれにくいという特徴があります。そのため、曲調をガラッとかえるというよりは、さりげなく響きを変えるために用いられることが多いテクニックとして知られています。ごちうさ楽曲への短三度転調の使用は、「ときめきポポロン♪」のメロ→サビ(C→A)で見られます。

跳躍進行(ド→ミなど隣り合わない音への移動)の使用は限定的で、どちらかというと順次進行(ド→レなど隣り合う音への移動)中心の穏やかで安心感のあるフレーズが目立ちます。まさにごちうさらしい大人しく可愛らしげのあるメロディラインだと思います。

Aメロ・A’メロ

順次上行・下行が中心の音域狭めのフレーズが続き、あたかもキャラクターが会話しているようにも聞こえます。2フレーズ目(例えば「湯気のむこうに見える」の部分)はナチュラルが入り、一時的にEからGへ短三度転調したことによって響きに変化が見られます。この部分転調は、育ちや性格がまちまちなごちうさのキャラクターたちの凸凹具合や、コミュニケーションのちょっとしたずれを表す効果的なアクセントになっています。

また各フレーズの強拍から入らない控えめな出だしがBメロ以降との良い対比になっていて、大人しさや可愛らしさを表現しています。

A・A’メロの終わりでは、メインのフレーズに対してサブフレーズが応答し、この後に続くBメロへメロディが途切れないよう工夫されています。特に1番Aメロの終わり「きょろりん~」はシンコペーションが効いたノリの良い応答です。

Bメロ

Aメロに比べて跳躍進行が増え、音域が広がったダイナミックな動きになり、サビへの盛り上がりを増幅させるパートです。

Aメロと同様、途中の4小節(例えば「(いろんなひとの)~いつでも」)だけGに短三度転調して、Eよりも少し明るい雰囲気に聞こえます。さらに、メインとサブのフレーズが応答し合い、片方で音程が上がるフレーズの後は、もう片方で音程が下がるフレーズが対応し、まるでお互いの問いかけに答えているようにも聞こえます(例えば「ふしぎの国は」(低い音から高い音への上行)→「意外と近く」(高い音から低い音への下行))。

メインフレーズに着目すると、1つのまとまりのフレーズの中で、出だしと終わりの音程のしりとりが行われています。例えば「ふしぎの国は(シ)」→「ど(シ)こかにあるの」といった具合に、前後のフレーズの音程が一致することで、複数のフレーズがつながって1つの大きなフレーズを作っているようにも聞こえてきます。Aメロですれ違っていたキャラクターたちですが、Bメロでは次第に協調し始めてきた変化が感じ取れます。

サビ

6度跳躍進行とその後の順次下行を組み合わせた、ダイナミックさと安心感を兼ね備えたフレーズです。メロに比べて音域が広がることで、本曲の中で最も盛り上がるパートになっています。

「楽しい楽しい」のように歌詞が繰り返されるフレーズは、前と後ろで同じ音程になっており、まるでココア達がしゃべりかけてくるかのような自然な旋律です。

各フレーズの最高音を見ると、ド#→シ→ラと順次下降してからド#に戻る、安心感のあるなめらかな順次下行が見られます。

中盤のサブフレーズ、「どもどもっよろしくです」にはミの音にナチュラルが入っており、響きが少しだけ明るくなるアクセントになっています。ここでは和音がセカンダリードミナントコードC#7になっていて、それに合わせた音色の変化になっています。

Cメロ

シンコペーションを取り入れ裏拍のリズムを生かしたノリの良いフレーズです。本曲の中でも最も軽やかなリズムに聞こえるパートで、ココア達の楽しそうな雰囲気が伝わってくるようです。

サビと同様6度跳躍進行で始まり、その後は順次上行・下行の滑らかなフレーズが続きます。ちょうどA・Bメロとサビの中間のような性格を持ち合わせており、1番に入る前のCメロは冒頭サビから1番につなぐブリッジとして、大サビ後のCメロは楽曲の楽しい余韻を残す働きを担っています。

メロディのまとめ

以上、「セカイがカフェになっちゃった!」のメロディについて分析してきました。まとめると、

  1. メインとサブフレーズの流れるような掛け合いが、キャラクターたちの終わらない会話を表現するかのような効果をもたらしている
  2. 所々に隠された短三度転調が、聴いている人の心をこっそりと揺さぶるだけでなく、キャラクターたちの関係性や成長をも表すアクセントになっている
  3. 順次進行中心のメロディラインや、フレーズの出だし・終わりの音程のしりとりが、聴いている人に安心感を与えている

ということになります。

どの要素もごちうさ楽曲らしい可愛らしさや楽しさを表現する大切な役割を果たしており、その結果聴いている人の心に残る印象的なメロディに仕上がっているのだと考えられます。

次回はメロディを裏で支えるコード進行について分析したいと思います。引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

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