「セカイがカフェになっちゃった!」の魅力:楽曲分析から分かるごちうさ楽曲のエッセンス アレンジ編

こんにちは、北近畿5号です。

冬コミ新刊の原稿を書いていて少し間が空いてしまいました。「セカイがカフェになっちゃった!」の楽曲を全5回に渡って考察する記事の第4回となります。

ここまで、構成メロディコード進行と見てきましたが、今回は楽器の使い方、すなわちアレンジについて分析していきます。

アレンジ ~ストリングスに重なる様々なジャンルの楽器が、カフェに集まったキャラクター達を表現~

楽器のアレンジ

全体を通して、ヴァイオリン、ヴィオラなどによる厚みのあるストリングスのハーモニーと、ブラスの華やかな音色との掛け合いが見事な楽曲です。

イントロはたった2小節にも関わらず、ごちうさらしいアレンジが詰まっています。
まず、ストリングスがファ→ド#の音を鳴らすのですが、その後3つの楽器が重なってきます。1つ目の鍵盤楽器は嬰ハ長調(C#)の音階を下降し、それが終わりかけるの頃に2つ目のバーチャイムもグリッサンドで下降してきます(高音でシャリリーンとなっているやつです)。そして最後に3つ目のハープのグリッサンドが嬰ハ長調(C#)の音階を上行し、ボーカルが入るという流れになっています。
ストリングスは本曲で最も活躍するメインの楽器群です(詳しくは後述します)。もしこのストリングスをごちうさの舞台に見立てれば、後から少しずつ重なってくる3つの楽器は、あたかもごちうさの世界に集まってきたココアやチノ達のようにも聞こえないでしょうか。すなわち、イントロは喫茶店に集まってくるキャラクター達の様子を表し、これから広がるセカイを奏でる”イントロ”になっていると解釈できます。楽器によって音程が動く向きが上行/下降と異なるのも、キャラクターの千差万別な個性を反映しているかのようです。
本曲のメインキーはホ長調(E)ですが、イントロの音色は嬰ハ長調(C#)ですので、部分的に長三度転調していることになります。ホ長調から見ると、嬰ハ長調は平行調の同主調ですから、言わば近親調の関係です。イントロからサビへとキーを上げることは、これからセカイを開くキャラクター達の気持ちの高ぶりを表現しているようにもとれます。

最初のサビで、ストリングスに対応してブラスが鳴り始めます。そこに続けてベースとドラムも入り、Cメロで一気に華やかなハーモニーが展開されます。
イントロで楽器数を絞って静かに始めておき、後で次第に楽器を増やしていくという構成は、前述したキャラクター達が集まってくる様子に対応して聞こえます。
この構成は「ノーポイッ!」でも同じなのですが、今回は劇場版用の楽曲ということで、いつにも増して楽器数が豊富です。
特に本曲の場合、最初のCメロの時点でほぼ全ての楽器が出尽くし、その構成のままラスサビ・Cメロまで駆け抜けるという点で、最初から最後までクライマックス感があります。
間奏やAメロで楽器が減ったり、一時的にオケが無音になる小節もあるのですが、全体からするとその割合は小さく、様々な楽器が奏でるハーモニーの分厚さに圧倒される印象が強く残ります。

以後、メロ・サビの大部分をストリングスがリードし、合間に鍵盤楽器とブラスといった対照的な音色を持つ楽器が呼応する流れが続きます。この呼応関係はあたかもキャラクター達の会話を聞いているかのようで、第2回で述べたメロディーの掛け合いと同様の効果が得られています。
ストリングスは欧風の世界を舞台にするごちうさにピッタリの楽器群です。クラシカルな雰囲気を醸し出すのはもちろん、ごちうさの優しい雰囲気も感じられる効果があると思います。
本曲と同じ大久保薫氏が作曲・編曲を務めた「ノーポイッ!」でもストリングスが効果的に用いられていましたが、本曲ではそれが全面に押し出されている印象です。
ギターはヴァイオリンやヴィオラの裏で終始リズムを刻む裏方的存在となっています。ただし、大サビ前の間奏ではギターソロパートが登場し、大サビへ向けて気持ちを高ぶらせてくれます。

「Daydream café」「ノーポイッ!」同様、メロやサビの要所要所にはシンセのサウンドが加わり、爽快感と目新しさを感じさせるアクセントになっています。ごちうさ楽曲は木管、金管、弦楽器に代表されるクラシカルな音色の中に、少し未来を感じさせる音要素を入れてくるので、いい意味でごちゃ混ぜ感があって好きです。これも、育ちが異なるキャラクター達の個性を反映しているかのようで、作曲者の遊び心が感じられます。

構成のアレンジ

楽曲構成のアレンジとしては、第1回の記事で触れた

  • 変則的なサビとCメロ
  • 大サビのアレンジ
  • 2番のA’メロスキップ

の3つが特徴的です。

いずれも楽曲をより感傷的に盛り上げる役割を担っていること、過去のごちうさ楽曲のDNAを受け継いでいることが共通しており、楽器のアレンジと同様に大久保薫氏のセンスが光っています。

アレンジのまとめ

以上、アレンジの考察として

  • 楽器
  • 構成

の2つを取り上げてみました。

特に、楽器の使い方はごちうさの世界観を表すのに大変重要な役割を担っていると考えられ、これまでのごちうさ楽曲の集大成とも言える完成度になっています。

次回は「セカイがカフェになっちゃった!」の歌詞について掘り下げて考えてみたいと思います。

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